男の人の声は唸り声を上げるものの、さっきのような威勢は見当たらない。



どこか焦っているようにも感じられた。






強い。



紅さんは、ものすごく……強い。


中性的で、どちらかというと女性に近い雰囲気をしていたから、繊細なイメージを持っていたけれど……。


本当は違っていたのかもしれない。

わたし、勝手に紅さんの器を決めつけてしまっていたんだ。


もしかしたら、紅さんって倉橋(クラハシ)さんよりもずっと強い霊力を持っているんじゃないかな……。



だからなの?



会ったばかりでもすぐにわたしの状況を把握してくれて、しかも気持ちまで汲み取ってくれたのって……。


もしかすると、紅さんも今のわたしみたいな経験をしたことがあるのかもしれない……。







紅さん……。



わたしは紅さんに与えてもらったシャツの襟元をギュッと掴んで、沈黙している広い背中を見つめ続ける。