「っふぇ…………」
大きな掌(テノヒラ)がわたしの後頭部を何度も撫でてくれる。
そのあたたかな存在に寄り添い、わたしは泣いてしまう。
「貴様……よくも……よくもこの俺様を弾き飛ばしてくれたな!!」
「!!」
何重にも重なった低い声は、もうすでに人間のものじゃない。
紅さんに弾かれた男の人は地面からゆっくり起き上がった。
周囲にはビリビリと電気が走っているみたいだ。
空気が振動している。
これは霊体が怒っている証拠でもある。
――怖い。
今までこんな状況を経験したことがなかったから、とても怖い。
わたしは紅さんの背中に腕をまわし、しがみ付いた。
「紗良ちゃん、大丈夫だよ。
霊体ごときが、君を犯そうとは……身の程をわきまえさせてやろうね……」
紅さんはそう言うと、背中にまわしたわたしの腕をそっと引きはがす。