それが有り得ないことだと気がついたのは、言った直後だった。
真赭さんとは……生成さんとは、もう会わないのに……。
それを考えてしまったのは、紅さんと一緒に出掛けて有頂天になっていた証拠だ。
これ以上の幸せなんか望んじゃいけない。
今日で、終わるんだから。
わたしはそっと首を振る。
「それは、もちろん、わたしも一緒だよね」
頭打ちをしているわたし。
紅さんはそう言うと、微笑んだ。
その瞬間、胸が苦しくなる。
それはまるで、これからも、ずっと一緒だって言われたみたいだったから――。
――ううん。
もう、終わりだよ。
紅さんとはお別れなんだ。
けっして言えない言葉を、わたしはグッと飲み込んで、微笑んだ。
するとその時を待っていたかのように、大きなブザーの音と女性のアナウンサーが注意を促す言葉が館内に流れた。



