わたしが奏美さんを襲ってしまったその日から……。
和夫さんたちの、わたしを見る目が変わった。
わたしが恐れていたことは現実になったんだ。
この人口が少ない村の人々に、わたしの体質のことが知れ渡り、わたしは村のみんなから畏怖(イフ)されはじめた。
ただ、ある人間を除いては……。
――そう、わたしを拾った清人(キヨヒト)さんだけは、先が短い老いぼれだからと、そう言って、わたしを見捨てなかった。
それがどんなに心強かっただろう。
わたしはけっして、ひとりきりじゃないと――愛されているのだと、そう思えた。
だけど、わたしを取り巻く運命は、みんなから拒絶されるようになって、どんどん過酷になっていった。
今までは何事もなかったと思っていた光景――。
それが、実は地獄だったことが判明した。
……昼間、何事もないと思っていた静かな部屋は、ラップ音が鳴っていて、
それは誰かが走る足音にも聞こえた……。



