汚い心を持つわたしには……。
父親を見殺しにしたわたしには……。
それを考えると、瞼(マブタ)が熱くなって、視界がゆるむ。
この目にたまった涙は、洋服を買ってもらって嬉しい気持ちと、汚(ケガ)らわしいわたしにしてもらうものじゃないという、悲しい気持ち……。
だから……。
「これは着られません」
「紗良ちゃん……?」
「デザインが気に入りませんか? やはり真赭様がお選びになられるものは派手ですかねっ……?」
「ちょっと生成、それ、どういう意味よ?」
わたしの言葉に、生成さんは同意すると、生成さんの言葉で真赭さんが怒りをあらわにした。
彼女は眉尻を上げて、生成さんを睨(ニラ)んでいる。
ううん、違う。
そうじゃない。
服はとても素敵だと思うし、真赭さんならとても似合う。
だけど、わたしはダメ。
「わたしには…………着る資格なんてありません」



