わたしが俯(ウツム)くと、紅さんが微笑むような、そんな息を耳に感じた。
「ご飯、あれから食べれなかったものね。お腹すくよね、ごめんね」
……悪くない。
紅さんは悪くないよ。
わたしの体が食べることさえも、飲むことさえも拒絶したんだ。
だから、悪いのはわたし。
それなのに、優しい紅さんはそうやって謝ってくる。
「わたし、ご飯……きっと食べられないから……。昨日はお水を飲ませてくださって、ありがとうございました……」
……そうだ。
水を飲めたことだけでもありがたいことなんだ。
お腹が鳴って恥ずかしいけれど、わたしは感謝をこめて、紅さんに顔を向けてにこっこり微笑んで見せた。
それなのに……。
いったいどうしてしまったんだろう。
さっきまでの優しい笑顔は紅さんからは無くなって、悲しそうに眉尻を下げていた。



