そのおかげで、体が麻痺して何も考えられなくなってしまう。
さっきまで何が悲しくて泣いていたとか、それさえも忘れてしまうような強い薔薇の香りだ……。
「…………くれないさん……」
「紗良ちゃん、雨の甘い香りといい……。どうして君はそうやってわたしを魅了していくのだろうね」
「んっ、ひゃん……」
ボソリ。
わたしの耳元でそっとささやかれ、紅さんの息が耳に直接入った。
おかげで変な声が出てしまう。
「紗良ちゃん…………」
わたしの背中にあった片方の手が、ゆっくりと上がってきて……うなじをそっと撫でられた。
「んっ…………」
まるで、愛でも告げられているような仕草に、胸の奥が苦しくなるし、みぞおちがなんだか疼く。
紅さんの親指が僕の首の後ろを何回も何回も行ったり来たりを繰り返し、円を描いて撫でられる。
「ん…………」



