こんなに汚らわしいわたしにしがみ付かれて、紅さんはさぞや不快だっただろう。
だから、紅さんの背中にまわしている腕を一刻も早く取り除かなきゃ。
いっそのこと、わたしの両腕なんか無くなっちゃえばいいのに……。
罪悪感でいっぱいになる。
「え? あ……それで、泣いていたの?」
だけど、紅さんはその場に相応しくない明るい声で話しかけてきた。
「紗良ちゃん……」
ぎゅうううううっ。
「へ? あっ……くれなっ!!」
それは、突然だった。
わたしの体が、紅さんによって抱きしめられてしまったんだ。
それも、痛いくらい強く……。
「く、くれないさんっ!?」
しどろもどろになるわたしに、紅さんは抱きしめる腕の力を緩めない。
「紗良ちゃん……君って人は、本当に奥ゆかしいんだね。なんて可愛らしいんだろう……」
薔薇の甘い香りはわたしの鼻孔を刺激していく……。



