目を閉じても無駄だと分かっていても、『ソレ』から逃れられることをただひたすら祈り、目をつむった。




やがて、やって来るだろう朝を願って……。



そうやって我慢している間にも、『ソレ』はとうとうわたしの胸あたりにまでやって来た。


閉じた目の中に、黒い影が映る。


ダメ、意識をそこに持っていっちゃいけない。


持っていけば、瞼(マブタ)の中にソレの姿を捉(トラ)えてしまう。


だからわたしは必死に意識を逸(ソ)らし、息を詰める。



そんなわたしの様子をあざ笑っているんだろう、黒い影は目の前にやって来る……。

そして……。



ペロリ。

「っはぅっ!!」


わたしの……唇に何かなめらかなモノが当たった。



なに?


なになになになに!?


怖くて、でもわたしの口に何が当たったのか気になって、薄眼を開けて確認する。



そうしたら、目の端っこに銀色をした何かが見えたんだ。