美狐はベッドの上で愛をささやく


――だけど……。



「げほっ!!」


久しぶりに与えられた水は、わたしの喉を通らなくって、口から吐き出してしまった。


おかげで、せっかく着せてくれた綺麗な浴衣を汚(ヨゴ)してしまった。


「げほっ、げほ、げほっ!!」



……息が……出来ない。

苦しくって、苦しくって呼吸することさえ困難になる。


水さえも飲むことのできない体。



人間として、食べるとか飲むとかいう機能を失ってしまった貧弱な体……。




やっぱりわたしは醜い存在なんだって実感させられる。


目尻から溢(アフ)れる涙は、やるせない思いと情けない思いだけ。


もう……イヤだ。


「げほっ、げほ、げほっ!!」

大声で泣きたいのに泣けない苦しさ……。


わたしの中で、また生まれてくる苦しくて悲しい感情に苛(サイナ)まれそうになった時だった。


「紗良ちゃん……大丈夫だよ」


隣から伸びたあたたかい腕が丸まった背中を撫でてくれる。