「…………………………」
「…………………………」
「っく、くれないさんっ!?」
その何かの正体を知るのに少し時間がかかったのは、わたしがあまりにも驚いてしまったから。
だって、紅さん、わたしの手にキスしたっ!!
わたしは慌てて紅さんの手から自分の手を引き離す。
心臓がこの上なくバクバク煩(ウルサ)いのは、紅さんが綺麗だからっていうのと、今までこういうふうにスキンシップをされたことが無かったから。
「紗良ちゃんは美しい上に奥ゆかしいんだね」
にっこりと微笑むところを見ると、どうやら紅さんにとって、手の甲のキスは当たり前なんだろう。
外国人さんが頬とかにキスするのと同じような感じなのかな……。
だったら、わたしがあたふたするのはおかしいこと……。
でも、ムリ。
わたしの心臓、ものすごくバクバクと跳ねている。
紅さんの唇が触れた手の甲が熱い。



