「なん……でもないんです。
この着物の持ち主の子は、紅さんに似て綺麗な人なのかなって想像してました」
汚いわたしとは正反対なんだろう。
わたしは浴衣の裾をギュッと握って、何でもないと微笑んだ。
「綺麗? わたしはそんなにいいものではないよ?
それに、真赭(マスホ)は綺麗というよりも可愛い感じかな、年齢も紗良ちゃんと変わらない」
その子、真赭さんっていうんだ……。
紅さんが可愛いって言うくらいだもん。
きっと、ものすごく可愛いんだろうな。
いったいどんな人なんだろう。
また会ったこともない真赭さんについて考えていると、紅さんは握りしめていたわたしの手をそっと包んだ。
「わたしは、君の方が美しいと思う」
「へ?」
何を言われたのかわからなくって、呆然と紅さんを見つめる。
そうしたら、紅さんに包まれたわたしの手が持ち上げられ……。
チュッ。
わたしの手の甲に柔らかい何かが触れた。



