人の死というのは、多少なりともやりきれない思いが残る。その原因が事故──とかく人命救助をした挙句に失ったとあると、その思いは強くなる。
 助けなければよかったのにと言えるほど無情ではないし、救助された人の命が無事でよかったというだけで片付けられるほど寛大でもない。

 そもそも事故が原因だと知ったのは昨日のお通夜だった。これもやりきれない要因の一つ。もし事故に遭った人達が駆けつけてくれなかったら、ずっと謎の死のままだった。
「今まで何事もなく過ごしてきた青年が、仮眠から再び起きることはなかった」とか何とか言って、奥様たちの井戸端会議のいいネタになるだけだ。

 たまたま真己が一人で歩いている時に、たまたま知り合いの子供が車にぶつかりそうになり、助けた真己が転がる先にコンクリートの塀があって、運悪く頭を強く打ったということだ。
 全くなんてことだろう。
 真己は人の面倒をみるのは好きなくせして、自分のやったことで人の世話になることを嫌がる節があった。だから今回のことも誰にも言わなかったのだ。