今泉君が固まってる。
一応声は聴こえていたらしいけど、考えているのかいないのか。目を泳がせて考えてる素振りのまま、なかなか答えてくれそうにもない。



じっと答えを待ってる私の視線を避けるように、今泉君がグラスを仰いだ。空っぽになったグラスを置いて、ふうっと息を吐く。



「内緒。とりあえず食べてしまおう、花火が始まるから」



今泉君は微笑んで、箸を握り直した。



何なの?
答えになってないじゃない。
私の胸でもやもやしているのは、苛立ちと諦めと。私のペースを見事に断ち切られてしまった僅かな悔しさ。



だけど黙々と食べ進める今泉君に、もはやツッコミを入れる隙はない。私を置き去りにするつもりかと思っていたら、今泉君が顔を上げた。



「ひじき、残さないで食べてね」



ひとこと告げて、すぐにまた視線を落として食べ始める。



あわよくば食べてもらえると思っていたのに残念。今泉君の嫌いなカボチャの天ぷらを食べてあげたのに……と思ったけど、私のシイタケの天ぷらと交換だからおあいこかな。



やっぱり、今泉君には敵わないのかもしれない。ちょっと悔しいけれど。