「待ち時間二十分ぐらいって、何食べるか決めておこう」



戻ってきた今泉君が、ひょいと差し出したのはメニュー。



やっぱり訂正、こういうところに今泉君らしさが表れてる。待ち時間も無駄にしないで効率的に動くところが、さすが今泉君だ。



ひとつのメニューをふたりで覗いて、あれやこれやと悩んだり。
本当にカップルみたい。
でも、そこらのカップルとは少し違う。



私たちは絶対に体が触れ合わない距離感を保っている。今泉君と私との間には、拳ひとつ分ぐらいの隙間。
ほんのりと体温は感じられるけど。



何か物足りない。



さっきみたいに、腰に手を回して……とは言わないけど、少しぐらいなら触れてくれてもいいんだよ?



メニューを捲る手が触れそうな距離まで近づいて、また遠ざかってく。離れてくにつれて、空気が重苦しく感じられる。



肩を抱いてなんて大胆なことは言わないけど、手が触れるぐらいいいでしょう?
もう少し、ドキッとさせてくれてもいいんだよ?



今日ぐらい。