いけないいけない、
早く離れなくちゃ。
とか言いながら、このままで居たいと願ってる自分が体を起こすことを許してくれない。
本心だけど、今はダメ。
本当にダメだってば!
後ろに傾いた体を起こして、エスカレーターの手摺りへと力いっぱい手を伸ばした。今泉君の腕が、手のひらが、指先が離れてく。
名残惜しさが追いかけてくる。
もう一度後ろに体を倒したら、今泉君は受け止めてくれるだろうか。
か弱いフリしてふらついてみたりしたら、今泉君はどうする?
そんなことを考えているうちに、温もりが離れていった腰が冷えていく。
これはチャンスだったのかもしれない。
思いつつも、ここで私から甘えるわけにはいかない。
ここは私の家の近所であり、高校からも近い。こんなところを誰かに見られたりしたら大変だ。
恐れるべきは両親だけじゃない。
ご近所さんだって、高校の同級生や顔見知りだっているかもしれない。
どこで誰に見られているかわからないんだから。

