雑踏の中から現れた今泉君は浴衣姿。
まっすぐに伸びた背筋と長身に、ほっそりした腕に浴衣がよく似合っている。



まさか浴衣を着てくると思わなかったし、こんなに似合うなんて。
にっこりと微笑んで、今泉君が歩み寄ってくる。



「よっ、浴衣似合ってる」



いつもと変わらない声なのに、きゅっと胸が締め付けられる。



「ありがとう、今泉君も似合ってるね」



と言って見上げたら、今泉君は恥ずかしそうに目を細めた。
小さな声で「ありがとう」と言って。



こんな顔をした今泉君を見るのは初めて。浴衣を着た今泉君も初めてだし、やっぱり今日は何もかもが新鮮。



「行こうか、とりあえず何か食べよう」



今泉君はくるりと背を向けて、フードコートへ歩き出す。制服を着た今泉君でも、普段着の今泉君でもない見慣れない背中に、ぞわぞわと胸がざわめく。



今日は何を食べるって言い出すんだろう?



昨日はたこ焼きだったから、今日は……