どこで観るのかは今泉君次第。
五時に待ち合わせということは、港周辺まで行くつもりだろうか。



港までは通常のバスのほかに、駅から臨時バスが出ることになっている。ショッピングモールにも停車するらしいけど。



「待ち合わせの場所はどうするの? 今日と同じ、ショッピングモールでいい?」

「うん、軽く食べてから観よう」



なるほど、ショッピングモールで晩御飯を食べてからということはわかった。



だけど、混んでないかなあ……
五時なら混雑もマシかな?



いろいろと考えを巡らせる。
花火大会に行くのは初めてじゃないけど、今泉君と行くのは初めて。



胸の中でもそもそしているのは不安ともうひとつ、緊張感に似た不思議な気持ち。



「じゃあ、明日ね」

「うん、気をつけて」



と言って、今泉君がひらりと手を振る。
涼しげな笑顔で。



だけど、私の家はすぐそこ。
ほんの数十メートル先に見えてるというのに。



私が家の門を潜って玄関の扉を開けるまで、今泉君はずっと手を振っていた。