駅へと向かう線路沿いの道路。フェンス際を私が歩き、右側に自転車を押して。
その向こうを今泉君が歩いてる。自転車を挟んでいるから、ちょっと会話が聴き取りづらい。
今泉君の家は、ひとつ隣りの駅だとわかったけど。
基本的に今泉君は言葉数が少なくて、あっさりしてる。抑揚を感じさせない声のトーンに、冷たささえ感じられるほど。
私はこんなにもドキドキしてるのに。
「芳田さん……」
今泉君の声が、走ってきた特急電車の音に掻き消されていった。おどけたような顔をして、今泉が微笑む。
電車が通り過ぎた後、駆け抜けた風に髪がさらわれそうになる。押さえようとしてハンドルから手を離したら、今泉君が空っぽになったハンドルを握った。
「僕が持つよ」
と言って、もう片方のハンドルへと手を伸ばす。
慌てて触れそうになった手を離すと、自転車が傾いて今泉君の手に収まった。
「ごめん、そんなの悪いよ」
自転車を取り戻そうとするのに、今泉君は手を離してくれない。
「いいって、気にしない」
やっぱり淡々とした言葉。

