吹奏楽部の今泉君と帰宅部の私が、付き合い始めたのは三年生になってから。



四月後半、二者面談を終えた帰りのこと。教室を出て階段へと向かう途中、ちょうど一組の教室から出てきたのが今泉君。



ぼーっとしていた私も悪い。
危うくぶつかりそうになったから急停止したら、今泉君が目を丸くしてた。



驚くこともなく平然と私を見下ろして、「大丈夫?」と冷めた声。
そのまま一緒に玄関へ。



「部活はないの?」



知っていて尋ねた。
今日は部活は休みだって。
今泉君は吹奏楽部。一年生の時に同じクラスだったし、トロンボーンを吹いてる姿を何度も見ていたし。



「うん、面談の日は帰れるんだ」



首を傾けて、にこりと笑う。
下駄箱へと伸ばした腕が筋張ってる。



「毎日練習頑張ってるね」

「ありがとう、芳田さんって……」

「私は部活ないから、毎日が休みだよ」

「どこかのホームセンターのキャッチコピーみたいだ」



くすっと今泉君が笑う。
柔らかに目を細めて。



「本当だね」

「うん、一緒に帰ろ?」



なんて言われて、一緒に帰ることに。