~友達~


あたしは如月氷夜(きさらぎひや)。公立中学校に通う、ごく普通の学生。
顔は特別可愛いわけでもないし、スタイルが特別いいわけでもない。
勉強だって、決して出来るわけでもないけど出来ないわけでもない。
運動だって、それほど出来るわけでもない・・・。
塾には行っているけど、親が行けって言ってるから仕方なく通ってる。
趣味だって特に無いし、特技だってない。
やりたい事なんて全く無くて、毎日淡々と過ごしている。

あたしが通っている学校は人数が多い為、クラス替えをすれば大半は知らない者同士となる。
とうとう中学3年生となるあたし。
受験生、という重い肩書きを背負う年齢なのだ。
きっと、今年も去年と変わらず淡々と過ごして行くのだろう・・・って。
そう思ってた。

桜の花が舞い散る春。
桜の門を潜りながら、あたしはそう思ってた。






今日は始業式。
暖かな春の風が、あたしを優しく包み込む。
2年間来た制服に再び袖を通し、行きなれた校門を潜り抜ける。
桜が満開に咲き誇り、新たな学期を向かえた生徒を迎え入れる。

校門を抜け、昇降口へとゆっくり歩く。
去年までとは違う下駄箱へ靴をいれ、上履きをはいて新たな教室へと向う。
3階建ての校舎で、3年生は3階が教室だ。
朝から小さな運動をするかのように、3階までの階段を登っていく。

廊下の窓から見える景色は、一面ピンク色の世界だった。
果たして新しい教室で友達は出来るだろうか。
多少の不安を胸に抱いて、あたしは教室へ足を一歩踏み入れた。
3年6組。
これが、あたしの新しい教室だ。