「どうしたの?朝から騒がしいわねぇ」
母がキッチンから声をかける。
「だって遥斗が…」
「いいからほら、早く食べて行きなさい」
作り終わった朝食をリビングに運びながら母が言う。
「遥斗くんも食べていきなさい」
「おばさん、いつもありがとな」
「いいわよ、そのくらい。遥斗くんもうちの家族の一員みたいなものなんだから」
下に下りてきた遥斗は私の母と世間話をしながら私の隣に座る。
(お母さんの前では調子いいんだから…)
私は呆れながらも朝食を食べ終え、玄関に行き靴を履く。
「ちょ、瑞希食うの早いって!俺まだ食ってな「行ってきまーす」
遥斗の言葉を無視して玄関を出る。外はスッキリと晴れ、爽やかな風がふいていた。
「んーっ気持ちい~」
伸びをしながら呟く。すると遅れて遥斗が玄関から出てきた。
「瑞希早いから…」
「さっきのお返しー」
「はいはい、俺が悪かった」
「分かればよろしい」
こんな他愛もない会話、二人だけの空間も、私にとって、すごく大切な宝物だ。
その宝物を手放したくない。手放さない。でも…無理だった……
