「アミに、何言ったんです?」


「何も。ただ『帰れ』という上司命令を出しただけだ」


「理由も言わずに?」


「あぁ」


「見損なった、みたいな雰囲気で?」


「あぁ」


「・・・アイツが、この部屋を飛び出すように、仕向けて?」




最後の質問に答えるように、持っていたプリントを机の上に滑らせた。

15時台の便に、アイツ愛用の水色の付箋が付いている。

それなのに。


目を引くのはマーカーの付けられた『最終便』の時刻だった。




「・・・大崎さ――――――」
「さ、打ち合わせするぞ」




俺が何か言いたいのをわかっているはずなのに、大崎さんは言わせてくれなかった。

机の上には、大崎さんが用意した『必要な資料たち』が次々に並べられていった。




タクがいなくなって二週間が経とうとしていた。

アミはいつも通りの顔をして、空っぽになった自分を誤魔化している。

日に日にから元気になっていくアミを見て、俺は何をしてやることも出来ずにいた。


同じ顔の違う誰かが傍にいることは。

アミにとって負担になっているかもしれないと考えるが、同じ職場なので離れてやることが出来ないのが現実だ。



俺は結局、何も出来ないまま仕事をこなすしかなった。