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「おい、アミッ!!待てっ―――――」
「藤澤」




目の前の大崎さんが、俺を諫める。

その表情から何かを読み取るのは俺には無理だ。

同じポーカーフェイスのタクなら、余裕なんだろうけど。



仕方なく、俺は大崎さんの向かいの席に腰掛ける。

アミが準備した明日の資料を広げて、その内容を確認していった。




「・・・え?」




テーブルの上の書類を確認すると、そこには必要なものが何枚か足りなかった。

それどころか、今回のイベントのものではない書類もちらほら見受けられた。



俺は、言葉を発することなく大崎さんを見た。

大崎さんは困ったように笑い、俺に向かっていた視線をテーブルの上に落とした。




「どういう、ことですか?」




アミが、こんな雑な仕事をする訳がないんだ。

アイツは見た目通り、仕事に人一倍真剣で。

人一倍の努力をしていて。

人一倍、周りのためだけに突っ走るようなヤツだから。



俺の手元にあった資料に手を伸ばし、大崎さんがそれを掴む。

その資料は、東京から来るクライアントが宿泊するホテルと、到着する飛行機のフライト時間の資料なのだが。

なぜか、関係ない時間のフライト予定まで印刷されていた。




「心、此処に在らず、か」




そう呟いた大崎さんは、今までで一番優しい顔をして。



そして、聞いたこともないくらい切ない声をしていた。