「・・・待ってるよ。当たり前でしょ」


「じゃ、遠距離だな。俺たち」


「それくらい、平気だよ。八年も片想いしてたんだから」


「まぁ、そういことにしといてやるよ」




意地悪く笑った顔が、いつものタクの顔で。

なんだかその笑顔にホッとして、また涙が出そうだった。




本当は、遠距離に何の自信もないけれど。

この腕がすぐに抱き締めてくれないことが、不安でたまらないけれど。


それでもこの人を好きだという気持ちだけは変わらない自信があるよ。

たった三年間しか恋人として接していないけれど。

十年間、この人を好きでいた気持ちだけは、胸を張って誇れるものだと想うから。



だから、此処に残ると決めたの。



だって、仕事もある。

大切な仲間もいる。

それを全部放り投げて、無責任に『行ってきます』なんて言えないよ。



そういうのを全部わかってて、タクはこういう道を選んでくれたんだと想う。



三年という期間で、私達がどう変わるのかわからない。

けれど、十年一緒にいても変わらなかったこの気持ちだけは、変わらないと信じたい。




タクは言葉が少ない分、口にした約束をしっかり守ってくれる。

それを、私が信じなくて誰が信じてあげられるだろう。




不安に想うのは、離れてからでいい。

見えないものに怯えるくらいなら、東京くらい飛んで行って確かめるから。




ただ、今は離さないで、と。

強く想いながらタクを抱き締めていた。