「・・・三年」
「ん?」
「三年経ったら帰ってくる」
「うん」
「それまで、待てるか?」
いつもなら『どうかなぁ』なんてはぐらかすのだけど、タクの声があまりに真剣で頷くことしか出来なかった。
満足そうに私の頭を撫でるタクの手には、言葉にしなくても伝わる優しさがあった。
「帰ってきたら、結婚でもするか」
返事が出来ずに、タクの顔をガバリと見つめた。
何それ!?
なんか『飲みに行くか』みたいな軽いノリで言ったよ、コイツ!!
信じらんない!!
あり得ないという目線をタクに投げかけたのに、タクの目線は真剣だった。
そして、また気付く。
そうだったね。
タクは素直なくせに素直な言葉はくれないんだったね。
この人は、大切なことを『大切なことなんです』って伝えてくれる程、器用じゃない。
当たり前みたいに言った言葉がこの人の本心なんだって、私だけが知っている。
そうか。
これが自信か。
私だけが知っているタクを知る度に、自信がつくのか。
その度に、この人をもっと好きになるんだ。
「ねぇ、もうちょっと感動的なプロポーズ、出来ない訳?」
「これが俺の精一杯だ。諦めろ」
「何よ・・・」
「亜末」
目線を合わせたその先は、息を呑むほどの綺麗な顔。
真剣な眼差しに、長い睫毛が震えてる。
私を抱き締める腕が震えてるのだって、気付いてるよ。
バカ、拓海。
返事なんて聞かないでよ。