二人の間に折り合いがつかない様な事がない限り、タクからこんなに電話が来ないなんてことは、初めてで。

仕事で余程のことがあったのかな、なんて心配になる。


いつも忙しいのに、今以上に忙しくなったら。

身体を壊してしまうんじゃないか、って。




それと。

今回は私がタクを怒らせているので。

いよいよご機嫌を損ねてしまったのでは、と。

不安ばかりが巡っていた。


『悪循環』という言葉は、今の私の代名詞だ。

ほんと、サイテー。




――――――プルルルルルルッ、プルルルルルルッ――――――




ビクッとして、心拍数の上がった心臓を押さえる。

予想だにしていなかった会社の電話の音に、心臓が強く脈打つのを感じた。


そして、すぐにその電話に手を伸ばす。

この時間の電話は、心の底から心臓に悪い。


今日は多分社員だろうけれど、週末になればスタッフということも有り得る。

折角当て込んだイベントスタッフが、急に『欠席します』なんて連絡が来たら。

泣きたくなるくらいに落ち込んでしまうのだ。




「お電話ありがとうございます。グリーン・プロジェクト、高田でございます」


『おぉ、高田か?お前、まだ残ってたのか?』


「お疲れ様です。もう少しで帰りますよ。大崎さんこそ、どうしたんですか?」


『あー、会社に戻るかどうか迷っててな。お前残ってるなら、戻るわ』


「いいですよ、もう帰りますから」


『あのな。女一人でオフィスに残しとける程、俺は無責任じゃねぇよ』