俺では距離が遠すぎて。

カズでは距離が近すぎて。

コイツなら丁度良い距離に居られる、って。

そう言いたいのか?



理解をするのは簡単だが、それを認めるにはあまりに突飛な発想であるように感じた。

亜未は誰よりも寂しがりで甘えただが、それを俺以外に見せるくらいなら一人で苦しむことを選ぶようなヤツだ。

それを無理矢理甘えさせるって―――――。




『アイツが此処にいるのは自分の意志じゃない。無理矢理連れて来たのは俺だ。だから亜未に詰め寄るんじゃねぇぞ』


「―――――っ!!!無理矢理ってどういう――――――」

『言葉のままだ。無理矢理抱いてやるつもりだったけど、抵抗された。俺に縋り付くことだってなかった』


「――――――ふざけるなよ」


『ははっ!カズと同じ声なんだな。何とでも言えよ。お前のいない場所で俺のテリトリーにはアイツがいる。それは『俺がいつでも亜未を甘やかすことが出来る』ってことだ。…………お前には、返さねぇよ』


「ふざけんなっっっ!!!!」




俺の叫び声など虚しく、大崎は電話を切った。

その後何度電話を掛けても繋がることはなかった。

電源を切られてしまえば亜未に連絡を取る手段など無くなってしまう。




亜未。

傍に居てやれない俺には、何もできないのか?

信じてるんだ。

お前が俺を裏切るはずなど無いと。

それでも、どうしようもなく不安になる。


お前、どうしてそんなヤツのところにいるんだよ。