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「アミッ!お前今どこに――――――」

『亜未なら俺のベッドの中だ』




俺は確かに自分の恋人の電話番号へと電話を掛けたはずだった。

しかし、聞こえてきたのは。

とても冷静で、とても冷たい。

俺を挑発するような低い男の声だった。




「お前、誰だよ。ふざけンな。亜未にかわれ」


『かわれる状況じゃねぇな。というか、かわってやる義理もねぇな』


「人の女に手ェ出してその態度かよ」


『手を出されるような状況にしたのは自分だろ?俺に当たるのは筋違いだ』




大人の余裕で俺の言葉を躱していく。

コイツか。

カズの言っていた『大崎さん』とやらは。

前にも思った。

コイツの声はアミが使う仕事の声に良く似ていて、有無を言わさず相手を納得させてしまう力がある。

相手を支配する声、だと。




「生憎、やましいことなんでないんでね。アンタに手を出されるほどの隙なんてねぇんだよ。大崎さん」


『あぁ、カズにでも聞いたのか?よく俺の名前なんて知ってたな。そんなに俺のこと警戒してたのか?』


「ふざけたこと抜かしてンじゃねぇよ。俺達の間に問題があるとすれば、それは俺達自身の問題だ。お前なんかのせいになんて、絶対にならねぇよ」


『まぁ、いいさ。カズにも言ったんだけどな、俺はお前『達』がしてやれないことを亜未に与えるだけだ』


「俺『達』が与えられないもの?」