「・・・なんで、ですか?」
「なんだよ」
「どうして・・・震えてるんですか?」
私の頬に寄せられた手は微かに震えていた。
気付くか気付かないかの小さな震えで、さっきよりも少しだけ冷たくなったその手に驚いたのと同時に気が付いた。
見つめる先の男の人は、困ったように笑い表情を緩めた。
まだ少しだけ震えるその手で私の髪を梳きながら、それでも抱き締めた腕を緩めることはなかった。
遠慮がちに触れる手の感触を敏感に感じ取ってしまう自分がいて。
梳いた髪を耳にかけられた瞬間、ビクリと身体が反応した。
「煽ンじゃねぇよ、馬鹿」
「なッ!そんなつもりじゃ・・・」
「此処まで来てもまだ帰れると思ってるほど、子供じゃねぇだろ」
「・・・帰りたい、です。離して欲しいです」
「だよな。でも、離してやるつもりはねぇよ。でも・・・嫌われる覚悟は、出来てなかったみたいだ」
頼りない子供みたいな顔で、大崎さんは小さく言った。
その言葉に目を見開いて応えれば、大崎さんはまた困った顔をした。
そして、大崎さんが言ってくれた言葉を思い出す。
『お前がこうして拒否したことが、お前を守ってくれるはずだ』と言った言葉を。
最後の最後まで、私の逃げ道を作ってくれていたのは大崎さん。
大崎さんが勝手にしたことだという証拠を残してくれたのも、大崎さん。
自分一人で私の我が儘まで引き受けてくれようとしたこの人は、こんな時まで大人の男の人だった。

