あの人はなんてことを。

俺に宣言する前に、もう本気だったんじゃねぇか。

いや、もしかしたら。

最初から本気だったのかもしれない。


本気じゃないフリなんて簡単に出来る程、あの人は大人で。

それゆえに俺の尊敬する上司でもある人なんだ。


強引なのに優しさがある。

とてつもなく厳しいくせに、その後に信じられないくらい甘やかしてくれるんだ。


そんなあの人が本気になった。

それは、俺にとって脅威でしかなかった。




「なら分かるだろ、タク。あの人は駄目だ。あの人は、アミの都合なんて構わず攫っちまうかもしれねぇンだぞ?」


『・・・分かる。アイツは本気だ。出来ることなら、今すぐ殴りてぇ』


「なら!」
『でも!』




タクの葛藤が見える。

わかってる。

お前が一番焦ってることも、お前が一番苦しんでることも。

お前が何よりアミを大切に想って、どれだけ大事にしているかってことも。




『それでも俺は会えねぇよ』


「拓海っっ!!!」


『確かに誤解だ。俺と雪江さんの間には何の関係すら存在しない。それどころか、俺と雪江さんは一生相容れることが出来ない程度の関係だろう』


「だから、それを説明してやれって――――」

『でもな。仮に俺達を見ていたとして、俺達の関係を疑うのもアミなんだ。俺のことを良く知っていて、俺のことを信じて待ってると言ったアミが、俺意外のヤツに縋ることになるのなら。俺達はそこまでなンだよ』


「・・・そんなのはキレイゴトだ」


『わかってる。・・・ガキじゃねぇンだ。そんなもん、言われなくても俺だってわかってンだよ』