『千……』



助けて……!



両手首を強く、締め付けられ、思わず目を閉じた。



その時。







『おい!




……ハァッ……鈴から離れろっ……!!』





苦しそうに呼吸しながら、叫ぶ声。



『千……』




安心感でポロポロと頬の上を涙が流れた。




来てくれた。


あたしを助けに来てくれた。


やっぱり、千は……。






『大丈夫か……?』




『うん!』




『小賢しいガキめ……。



なぜ倒しても倒しても向かってくる!!』






『悪いけど、俺にはあんな罠なんて効かないから。


あと、倒されたワケじゃなかったし』




そんな風に軽く言ってるけど……彼の身体はボロボロだ。



あたしのために戦ってくれたんだね。




男の人は怒りで、さらに両手に力を込めた。



『痛……』



ギリギリと締め付ける強い力。


男の人の力ではあたしのような子供の手首は簡単に折れてしまいそうだ。




『待ってろ!! 鈴!!』


力強い彼の声が暗い邸に響いたかと思うと……フッと彼の身体は蜃気楼のように闇に消えた。




『なにっ!?』




男の人は驚き、一瞬あたしを締め付ける力が弱まった。





『おりゃああぁああ!!』




いつのまに移動したのか、あたしたちの背後に回り込んでいた千が男の人の足をすくった。



『うぐっ……!!』



突然のことになすすべもなく、男の人は硬い床に、無様に転がった。





……弱っ!!





あたしもその瞬間渾身の力を振り絞って、男の人の手を振り切った。



だが、もう男の人は気を失っていてさほど力は強くなかった。


その手はダランと床に落ちた。