「……これでいい? エク」
再び彼女に視線を戻すとエクは驚いた表情のまま、固まっていた。
けれど何かを吹っ切るように頭をブンブン振ると……。
「……ありがとう」
うつむいて、呟いた。
予想だけど……たぶん真っ赤だな、エク。
あたしはこっそりクスッと笑った。
「なんだっ」
「なんでもないよ。
それに礼を言うのは兄様を助けてから!!」
怒って顔を上げたエクは、思った通り真っ赤になっている。
カワイイ……。
「よ、よし。 もう行く!」
照れちゃって……。
恥ずかしいのかエクはさっさと歩き出してしまった。
ドンドンその背中は小さくなっていく。
「お、おい! 待てっ!!
行くぞ、すずか!!
置いていかれる!!」
「うん、すぐ行くよ!!」
元気に返事を返したものの、あたしの歩幅は変わらない。
エクはマントの人と同じようなマントを着ていた。
でも、エクの髪は短いうえに明るいオレンジ色。
笑いかただってエクがあんな不気味な笑いかたをするわけがない。
あんなキレイで照れ屋なエクが。
声だって、雰囲気だって違った……。
もしかして……
マントの人は別にいるの……?
正体が分からない。
いったい誰なの?
何を企んでいるの?
「すずか━━━━━━!!」
遠くからナディの声が響いてきた。
「はぁい!!」
ナディに聞こえるよう大声で答えると、モヤモヤした気持ちを抱えたまま、声が聞こえた方へとあたしは向かった。
ねぇ、あなたは誰なの……?