歩道橋を駆け下りる。「桜公園」と書かれたプレートが見えてくる。
俺は、桜公園を覗く。すると、ブランコに桃花ちゃんが座っていた。
-キィッ。
油の切れたブランコの音。なんだかその桃花ちゃんの後ろ姿が寂しく見えた。
俺はゆっくりと近づいた。もう少しで触れられる。そう思ったとき桃花ちゃんの膝の上にキラリと光るものを見た。泣いてるのか・・・?
俺は声をかけることにした。
「桃花ちゃん?ごめんね?待った?」
桃花ちゃんは顔を上げて目をこすって振り向いた。
「ううん。大丈夫」
その柔らかな笑顔に胸が痛んだ。
「い、行こっか・・・?」
「うん」
さっきまで泣いてた顔が、すっかり柔らかな、でもどこか寂しそうな顔になっていた。
俺の家に着いたとき、桃花ちゃんは、話しだした。
「愛空くん。あのね、隆太くんには、私とは違う綺麗な女の人がいたの。私、それ見たら・・・」
そこで桃花ちゃんが口を止めた。
「も、桃花ちゃん。ここだと風邪ひいちゃうから中に入ろ?」
桃花ちゃんは頷いた。
俺たちは家の中に入る。
桃花side*
愛空くんの家の中に入る。
私はさっきあったことを全て愛空くんに話した。
「・・・それで?桃花ちゃんはどうしたいの?」
「どうしたいって・・・・。隆太くんが本気で別れるつもりがあるなら別れるよ?」
「そっか・・・。それでいいの?俺今、隆太に電話してみるけど?何か伝えたいことは?」
「私はもう隆太くんに何言っても無駄だから。何もないよ」
「わかった」
そう言って愛空くんはスマホを手に持ち耳に当てた。
「・・・・あ、もしもし。俺さ隆太に言いたいことあるんだけど?」
愛空くんは、顔を上に上げた。
「あのさ・・・お前、本気で桃花ちゃんと別れるの?・・・なあ」
そのとき、愛空くんの目から一粒の涙がこぼれ落ちた。