「お、おい・・・もも・・大沢さん?」
大沢さん・・・そっか。もう終わったんだ。
なんだ簡単なことじゃない。自然と笑みがこぼれた。
隆太side*
目の前で二時間以上も待っていてくれた愛おしい人を傷つけてしまった罪悪感で、胸がいっぱいだった。
「お、おい・・・もも・・大沢さん?」
俺は口から「桃花」ではなく「大沢さん」という桃花の苗字が出ていた。
桃花は急に涙を止めてうつむいた。
そしていつもより柔らかな笑顔で笑った。
「そっか!私、長澤くんとは終わったんだよね!うんうん。ははっ!まあ、私には愛空くんっていう男の子がいるんだ!長澤くんもその人と頑張ってね!じゃあね!」
桃花の口から出たのも「長澤くん」だった。俺は、「長澤くん」と聞いたとき心臓がこれ以上ないくらいに痛んだ。
すると桃花は走って去っていった。
桃花side*
これでいいんだ。終わったんだから、気にしなくても。それよりお母さんには亜子の家に泊まるって言っちゃったからな。亜子は今日は用事があるみたいだし。
愛空くん・・・。私は亜子から教えてもらった、愛空くんの連絡先に電話をかけた。
愛空side*
桃花ちゃんうまくいったかな。俺は一人暮らしだ。今ベッドの上で、スマホをいじっている。
俺は密かに桃花ちゃんを好きだった。桃花ちゃんは隆太のだから我慢していた。
-プルルル・・・
突然スマホからコール音がなる。ん?知らない番号。俺は出ないつもりだったが、鳴り止まないため、通話開始ボタンを押した。
「も、もしもし・・・?」
『愛空くん・・・』
「桃花ちゃん・・・?」
『泊まりに行ってもいい・・・?行くとこなくなっちゃった・・・』
「え・・・」
泊まる・・・?無理無理無理。俺ゼッテー感情抑えれねえって。
『ダメなら公園で寝るし』
公園!?桃花ちゃんは馬鹿だな。
「わ、わかった!いいよ!泊まりに来ても!桜公園でまってて!」
『うん。わかった』
電話を切って俺はパーカーを羽織り、桜公園へ向かった。