-コツ。

「あら、やっぱりそうだったのね。大沢さん。見てなさい!」

そう言うとナツミは、俺と桃花を強引に引き剥がした。

「・・・!?」

桃花は潤んだ目を見開いている。

ナツミは俺の首に手を回した。まさか・・・嘘だろ・・・?

抵抗するまもなく、ナツミは俺の口に自分の口を押し付けた。

香水臭い匂いとグロスの匂いが混ざる。桃花は目を見開いていた。そして一粒の涙をこぼした。桃花・・・。俺は胸が苦しくなった。俺はナツミを引き剥がした。

そして強く口を拭った。

「ふざけんなよ!」

いつもより声が大きくなる。桃花も肩をビクッと震わせた。するとナツミは逃げるように体育館から出て行った。

「ハァハァ・・・」

荒くなった俺の呼吸。

「隆太くん」

後ろで桃花が呼ぶ。ダメだ。キスを目の前で見られてしまった。桃花はきっと起こっているであろう。

「無視しないで。キス・・・のこと・・怒ってないから・・無視・・しないでよお・・」

とたんに泣き始める桃花。

「やだやだっ・・・隆太くんに離されたら、私、死んじゃう・・・」

-パタッ。ん?振り向くと桃花は苦しそうに、マットに横たわっていた。

「桃花・・・。起きろよ。冗談やめろって。なあ。ははっ。分かってんだって、起きろって・・・。桃花!」

笑って冗談だと思っていた俺は、桃花の呼吸が荒くなってるのに気づいた。

胸が痛む。クソッ。やめてくれっ。嫌だ。桃花の呼吸が止まった。おい。嘘だろ?

「桃花。なあ。おい。桃花!死ぬなよ!俺はずっとお前のそばにいる!」

俺は桃花の唇に自分の唇を重ねた。何度も何度も。やっと唇を離したとき。

「ん・・・隆太・・くん・・」

「桃花・・・よかった」

「隆太・・くん・・泣いてる・・の?」

「ばかっ!泣いてねぇよ!」

「嘘。だって・・涙・・でてるよ」

苦しそうに必死に話す桃花を見て涙が出てきた。

「桃花。保健室に連れてってやる。立てるか?」

桃花は首を横に振る。俺は「わかった」と頷いて桃花をお姫様抱っこした。

いつもなら抵抗するはずなのに、よっぽど苦しいのか体重を俺にあずけている。

女子に見つからないようにしないと。キャーキャーうるせぇからな。

なんとか保健室についた。