「須磨くん」

「あ?」

「須磨くんはどうして、一緒に帰ってくれるんですか?」

「……」

だって俺は千葉の彼氏だし。千葉に傷付いて欲しくないし。千葉のことが大切だし。

全て口に出すのが恥ずかしい。

「須磨くん?」

「俺は……お前の友達、だからな」

なんとか出した答えはそれだった。
本当の千葉が聞いたら怒るだろうな。あいつは意外と恋人という繋がりを大切にしていたから。

だけど今の千葉はその答えで満足したようで、綺麗な笑みを浮かべた。

「ふふ、友達ですか。ありがとうございます」

本当は恋人だけど。

今はこれでいいと思った。

今の千葉は前の千葉とはまるで別人だ。

俺みたいなのが彼氏なんて嫌だろうと思った。


これはこれで、いやむしろ、こっちの千葉の方が好きかもしんないけれど。