「……!」 あたしの唇に柔らかいあたたかいものがふれた。 それは一瞬だけくっついて、離れて。 「……っ!」 それが実さんの唇だったのだということに遅れて気づく。 「おい兄貴!」 誠の怒鳴り声。 「許してくれよ。これで桃花ちゃんのこと、やっと諦めたんだから」 「いくら兄貴でも許さねぇよ! バカ兄! アホ兄!」 あはは、と楽しげに笑う声と怒鳴り声が重なる中。 ……混乱したあたしの頭は、もうほんっとにショート寸前でした。