「えっ、それはムリだなぁ。だってなんかのとき脅しに使えそうだし?」



誠はスマホを片手に微笑んでいる。



あの中にその写真があるにちがいない。



奪おうと手をのばしてもひょいっとかわされてしまう。



「い、意地悪!」



やっぱり誠は意地悪だ!



ちょっとでも優しいとか思ったあたしがバカだった!



「それ消してよ!」



必死に訴えてみても。



「ダメだよ。だってさ、あの……くっ、あの顔っ……あははっ」



半笑いのまま誠はとりあってくれない。



そんな誠をあたしはただじっとにらみながらすねていた……。




「……消したくないよ。だってさ、桃花の表情がすっごくかわいかったから」



彼がそうひそかにつぶやいていたことを、あたしは知らない。