そんなとき、あたしたちのうしろに人が近づいてくる気配がした。
その気配はあたしたちの横で止まる。
チラリと見ると、当時同じクラスだった安田くんがいた。
でもこのときあたしは安田くんをただ普通に、なんだかかっこいい人だなぁ、とくらいにしか思っていなかった。
もちろん、安田くんとは事務的な会話しか交わしたことがなかった。
「あれ? 安田くん?」
あたしたちの近くで立ち止まった安田くんに、美奈ちゃんが話しかけた。
「藤岡さんと澤上さんか。あの子……捨て猫?」
安田くんはダンボール箱の中の子ネコを見て言った。ちなみに、藤岡とは美奈ちゃんの名字だ。
「そうみたい」
美奈ちゃんは悲しそうに答えた。だよね……あたしもあの子を飼いたいもん。
「藤岡さんも澤上さんも、あのネコ飼わないの?」
あたしたちの表情を見た安田くんがそう訊いた。

