神なるものに恐れなし。

ーーー一方、御子神家本家では

「那岐和様が?!」

寿々彦の報告で、屋敷は騒然となった。
家に仕える神官の者たちは歓喜と安堵でそれぞれに笑顔を溢れさせる。

「そっ、それで那岐和様は何処に?」

一人の若い神官が期待を乗せたまま、視線をこちらに向けた。

「今はおりません。ですが、那岐和様の気は既に把握しております。明日にでもこの本家に連れ戻します。」

答えたのは、美命だった。感情を感じさせない瞳。凛々しく微動だに動かぬ姿勢。
その轟々たる姿が神官たちに緊張を走らせる。美命の斜め後ろに控える薫子が、美命の言葉を継いだ。

「那岐和様が戻られれば、再びこの国の均衡は保たれましょう。それまで皆の者、美命様をその身に代えても守るのだ。」

数百名に及ぶ神官たちはそれに肯定する如く、畳にひざまずく。

「では、各々持ち場につけ。」