神なるものに恐れなし。

‥切望の平和‥

「やっぱりさー、メイド&執事喫茶が一番
 合ってるよなー。オレらのクラスにさ。
 こっちにはイケメンと美女が勢ぞろい
 してんのに。」

学校の帰り道。俺は陵介〔りょうすけ〕と
一緒に寮へ戻っていた。メイド&執事喫茶というのは俺たち開鳴学園高校が来月行う文化祭の出し物だ。

「お化け屋敷で充分だ。第一、誰が執事
 やるんだよ。」

「一人はお前だろー?」

「断る。」

陵介は俺の言葉の予測がついていたのか、
そのまま間なく返してきた。

「お前なぁー、少しは自覚もってもらわない こっちが虚しくなるっての。…ナギ、俺に 言って欲しくてそんな鈍感ぶるん?」

「何をだよ。」

そう言いながら、俺は携帯を見ているのだが陵介は気にもしないで続けた。

「いいか?これは女子からのコメントだぞ ?
 1つ、『凪人君ってぇ、なんかぁ、すごく
 顔立ちが整っててぇ、それでいてあの少し くせっ毛のある髪!もぅすごくカッコいい
 んだけどぉ。』」

「………。」

…俺は時々、こいつが心配になる。精神的な面で。ちょっと理屈混じりに俺は異を唱えた。

「容姿だけで、人に好かれるって保障はど こにもないだろ?」

(性格悪けりゃ、まず誰にも好かれねーと
 思うし…。)

その言葉も予想済みだったのか、陵介は人差し指でチッチッと揺らしてみせた。

「ところがどっこい。それは二つ目で解決 するのだよ。
 2つ、『それに顔だけじゃなくってぇ、
 クールな所も素敵よねー。無口だけど、
 行動力あるしリーダーシップとか指示出 しできるし頼りになるわよねぇ。』」

「………。」

それはただ無駄な時間を出さないようにと
進んでやりたかった訳ではないのだが…。
しかし、陵介の記憶力は凄まじいな。こういう所を学業に使えばいいのに。

「な?お前は生徒だけでなく、先生にも好 かれるタイプって訳だ。んで3つ目。こ れもかなりの高ポイントだ。男がモテる 為には欠かせないもんだ。」

…よくこんなに人のことで力説できるよなーと毎度思う。そのコメディ的な能力を何故他で使わないのか不思議だ。

「3つ、『運動がやっぱり得意なのカッコい
 いわ!陸上でも球技でも水泳でも、何で もトップクラスの成績出すから女子に好 かれるのよねぇ。あと、数学と英語がす ごいわぁ。数学なんてどんな難問でもス ラスラ解いちゃうし、英語はペラペラだ しいつもテスト100点だし!』」

俺はできる限りの感情を込めて冷めた表情を陵介に向けた。