三つの世界 ⒈


「乃恵瑠様ー!!もう時間ですよー?」
メイド、花奈の声だった。
「は、はーい!」
元気よく返事すると、乃恵瑠は見事なまでの、金色の絹のような柔らかな髪をなびかせ、ドタバタと降りていった。

バタン…。

扉が閉まり、鏡に写っている人影だけが、残った。
いつもは、たいてい部屋にいるときだけ見守っている。だが、もうそれでは、間に合わないようだった。
「そろそろ、時が来たか…。」
人影は、そうつぶやくと、ユラユラと幻のようにゆっくりゆっくりと、消えていった…。