「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"っ!!!ぐぅっ…っ!!」
まるで獣のような声とともに床にはぽたぽたと赤い鮮血が滴りおちた。
血の臭いがより一層濃くなって思わず眉をひそめた。
「吐けよ、吐かねぇともっと苦しむことになんぞ」
こんっと木槌で古高の足に刺した釘をよりめり込ませていく。釘といっても小さくはなくて直径一㎝くらいはあるであろう杭みたいなものだ。
その間にも蝋燭をたらしたり、荒い縄でむき出しの腹や腕を打ったりして彼の体からはどんどん赤黒いものが流れていく。声を出すことさえも億劫になったのかというほど静かになったが、少し違う。出していないのではなく声にならない声しか出なくなっているのだ。顔も変形してしまって誰だったのかわからなくなってきたくらいに彼は声をあげた。
「……す」
「あ?」
「…おい、新八一回やめろ」
本当に小さく、蚊の鳴くような声がして土方さんによって永倉さんの手が止まった。
「は……な、す………っ」
「ふーん、まぁもったほうじゃねぇか?誰だっていてぇのは嫌だもんな」
そこから古高は途切れながらも情報をすべて吐いた。
古高のところに武器を預けていたのはやはり長州の者たちで、祇園会の前の強風の日幕府の重役たちの暗殺とともに京に火を放つと天子様を連れ去っていくという計画が立てられているらしい。
すべてききだすと土方さんと永倉さんに続くように蔵から出たが、後ろからきこえたごとっという音からして古高は殺されたのだろう。せりあがってくる嘔吐感を飲み込んで私は腰にさげた刀に触れてみた。それは冷たく重いもので震える手からは滑り落ちてしまいそうだったけれど、ぐっと握りしめて空を見上げた。もう夜が近い。