「永倉さん、お願いがあるんですが、」
「えっ?あー、わりぃ。今は土方さんに呼ばれてっからよ」
「それに関係することなんです」
私は永倉さんの手におさまっている蝋燭と釘を視界の隅に入れながら永倉さんをじっと見つめた。




「…おい、新八」
「わかってる!言いたいことはわかってるけどよぉ…」
「私が無理を言ったんです。迷惑はかけませんから」
「……早めにでていったほうが賢明だぞ」
「すみません、私馬鹿なんです」
土方さんは大きく舌打ちしたがどうにか認めてもらえたようでほっと息をついた。息をついたところでそこは鉄の臭いが充満していてとても安らげるような場所ではない。
今、私がいるのは薄暗い蔵の中であり今しがた捕えたばかりの古高の拷問場所だからだ。土方さんも永倉さんもあんな風に気遣ってくれたが新選組に、この幕末という激動の時代の中にきたのに今まで無残で残酷でそれでいてこれ以上ないほど現実味をおびたものを見てこなかったほうがおかしいのだ。だから枡屋でも頭が追い付かなかった。
このままで戦場に出たとしても役にたつどころか足を引っ張るだけであろう。
私は、強くなりたい。この時代でも生きていける強さがほしい。