「お!おかえり、椿」
「おけーりー…って血ぃついてんぞ!?」
「返り血なので大丈夫ですよ。といっても沖田さんが斬った人のですけど」
隣にいる沖田さんがへらりと笑って呆れたような声を出す。
「俺と一くんがいるのに椿に怪我させるわけないじゃないですか」
それには同感なのか斎藤さんも無言で頷いた。
「それより副長はどこに…報告をせねば」
「報告は山南さんにしてきてくれ。俺は古高を吐かせてくる」
「土方さんっ!」
「椿、斎藤、よくやった。総司は後で命令違反した言い訳を言いに来い。それまでは部屋で反省してろ」
「…はーい」
足早にこちらに来た土方さんは沖田さんに少しだけにらみをきかせると永倉さんに「蝋燭と釘持ってきてくれ」とだけ伝えて行ってしまった。
きっと今回の捕り物が大きいと感じているから気が抜けないんだろう。いつもより早足で去って行った土方さんの姿が見えなくなると私はみんなに聞こえないように小さく息をついた。






『池田屋事件』
新選組が活躍したもっとも有名な事件といってもいいのではないだろうか。
しかしそれは激動の時代の始まりでもあるのだ。