この出会い茶屋は二階建てになっていて下に受付と出入口、上がお部屋であるため枡屋が上から見張ることができ怪しまれることもない。しかしそんな場所で男女二人となっても仕事ができる人なんてあの新選組の中では限られているわけで、土方さんには私に相手を指名するように言われた。
多分、いろんな意味で後悔しないような相手を選んでおけ、ということだったんだろう。そこでいつも冷静で女の人に興味もなさそうな斎藤さんを選んでみたのだけれど、少しかわいそうだったかもしれない。
まだ頬に少し赤みが残っている斎藤さんに謝ろうとしたところで彼が私のほうを見ていることに気付いた。
「えっと…なんでしょうか?」
「お前は、どうしてそこまでできる」
静かな目がじっと私をみてきてどきりとした。
「私は、新選組が大好きなんです。身寄りのない私を置いてくれるといってくれた近藤さんはもちろん優しくて芯があって武士としての生き様を見せてくれるみなさんが…私はずっと前から、大好きだったんです」
最後の言葉を言い終わってから私ははっとした。
私が未来から来たということはまだみんなに話していない。土方さん達は知っての上で置いてくれているけど、私がみんなが怪我をするのを知っていながら何も言わずに送り出しているんだってことを知ったら、どうなるんだろう?嫌われてしまうのだろうか?
言ってはいけない、未来が変わってしまうなんて本当は自分にとって都合が悪くなるからそう思っているだけなのかもしれない。もし、パラレルワールドがあるとするなら、きっと私がすべて言ってしまったという場合の世界もあるんだろう。でもそうしたら私はきっと…。