「大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます…あ」
声が震えないように頑張ったのも水の泡。
山南さんの差し出してくれた手に重ねようとした自分の手が震えていた。
すぐに引っ込めてもう片方の手でぐっとつかむけれど急に震えが引いてくれるわけでもない。
「…立てますか?」
「なんとか…」
力の入らない足をなんとか踏ん張らせて立ち上がった。
はたから見たらきっと生まれたばかりの子鹿かやっと歩けるようになったばかりの赤子のようだろう。
苦笑をこぼして自室までつれてきてもらうと座り込んだ。
「この前私の部屋に来たのはこのことがあったからですか?」
「はい…。びっくりしてて、落ち着きたかったので…」
「そうですか。でももう心配ないですね。私と沖田くんのお気に入りの人にちょっかい出すような勇気のある人ここにはいませんから」
くすりと笑った山南さんの優しさに思い出したかのように涙があふれてきた。安心しきったからか一度出た涙は止まることを知らないかのようでごしごしと目元をこする。すると山南さんは急に立ち上がった。
「この前は私がお茶を入れてもらいましたし、今日は私が入れてきましょう。温かいお茶でも飲めば少しは落ち着くでしょう?」
山南さんは優しい。
目元をこする指と指の間から山南さんが私の頭をなでようとしたのが見えた。でも、私がほんの少しだけだけど身を固くしたのがわかったのか、すぐにその手を引いた。
申し訳ないと思いつつもその優しさにほっとした。