すっと襟にのばされた手を思わずばしっと振り払った。
それが頭にきたのかだんだんと赤羽さんの力が強くなっていって無理矢理に襟を開けようとしてくる。
抵抗はしているけど怖くて声は出せないしやっぱりせり合っていれば男女の差が出る。時間がたてばたつほど力で押し負けてきてしまう。
「や…っめてください!」
「確認しようとしているだけですよ。どうしてそんなに嫌がるんです?やっぱりあなたは…」
「何をしているんです」
少し離れたところから急に聞こえた厳しい声に赤羽さんはもちもん私も身を固くした。
赤羽さんはゆっくりと私からはなれて後ろを振り返った。私も彼が離れたことで声の主を見ることができた。
「なにをしていたんですか?」
「い…いえっ、その…」
「答えられないようなことなのですか?赤羽くん」
「っ…」
答えられないというよりは答えさせてもらえないような空気なのだ。
「山南さん、」
「赤羽くん、一つ教えてあげましょう。椿くんは沖田くんのお気に入りです、彼の耳にこんなことが入ってしまったらどうなるんでしょうね」
「ひっ…!」
にっこり、という山南さんの如何にもつくりものめいた笑顔に私まで背筋が凍った。
これが殺気というものだろうか。体がうまく動いてくれない。
「ああ…それに、椿くんのことは私も結構気に入ってるんですよ。まだ続けるようなら私はあなたと刀を交えなければなりません。しかし私闘は切腹となっていますので手を引いていただけるとうれしいのですが…」
「は、はいっ…すみませんでしたっ…!」
ふらふらとしながらあわてて去っていく彼の姿が見えなくなると山南さんが手を差し出した。