「すまなかったな」
「え?」
「辛い仕事をさせてすまなかった」
土方さんの部屋にはいると鬼の副長に頭を下げられた。まさか頭を下げるなんて…あの土方さんが、だ。
「そ、んな…顔を上げてください」
「今更だと思うだろうが本当に、」
「やめてください!」
肩をぐっとつかんで顔を半ば無理矢理あげさせる。
「…私は、間違ったことをしたのでしょうか」
「……」
「新選組の役にたてませんでしたか?」
こたえてください、とじっと彼の目だけを見つめる。ぎらぎらとしているその目が少し揺れて私は手に力をいれた。
「役に、たってるさ…もちろん…」
「だったら謝らないでください。私は土方さんに謝られても嬉しくないです」
「お前な…」
「私は…私がしたことは間違ってないというのなら謝らないでくださいよ…。決心が鈍ります…。私はこれからも、新選組のために動きたいと思ってるんですから」
あぁ、また泣いてしまった。二人だけだからかさっきよりも恥ずかしい気がする。
目の前の土方さんを見れば澄ましたような顔をしながら奥歯を噛み締めているのがなんとなくわかって、やっぱりこの人は優しい人だと思った。
濡れた頬をごしごしとぬぐって土方さんに笑いかけた。
「これからもよろしくお願いしますね、土方さん」
「…ああ」
「では屯所に帰ってきてからの初仕事としてお茶をいれてきますね!」
「あぁ、頼む。…あと」
「はい?」
「おかえり。…よくやった」
滲んだ視界がきらきらと輝いた気がした。